自賠責運用益拠出事業について

日本損害保険協会

日本交通安全教育普及協会・井澤夕里課長にインタビュー

2025年度 自賠責運用益拠出事業/オンラインを活用した全世代向け交通安全教育の拡充

子どもや高齢者が被害者となる悲惨な交通事故が後を絶ちません。2025年版交通安全白書によると、2020~2024年に交通事故で死亡したり重傷を負ったりした小学生は3,370人に達し、歩行中の事故のうち38.2%が登下校時でした。中高生は自転車による事故が多く、また2024年の交通事故死亡者の56.8%が65歳以上と、子どもや高齢者の交通安全教育の重要性も高まっています。一般財団法人日本交通安全教育普及協会は、オンラインを活用した交通安全教育の開発や普及に取り組んでおり、日本損害保険協会はその活動を支援しています。今回、井澤普及事業部課長にオンライン教育の特徴や展望を伺いました。

参加、体験、実践を重視

 日本交通安全教育普及協会は、多くの尊い命が交通事故によって失われた第一次交通戦争といわれた時代を背景に、子どもたちを交通事故から守りたいとの思いを持って1968年に設立されました。現在はその理念を広げ、すべての世代に向けた交通安全教育の普及に取り組んでいます。以前の学校向け教育は、対面式が主流で、校庭に白線を引いて設けた模擬道路を活用した実技指導や、生徒を一堂に集めた講話形式などにより実施していました。オンライン化したきっかけはコロナ禍です。2021年には入学前の教育が対面方式で全くできなくなり、5~6月に子どもの事故が増えてしまったのです。また、学校でパソコンやタブレット端末といった情報通信技術(ICT)の活用が進んできたことも背景にありました。
 2021年度に始めた学校向け「交通安全オンライン教室」は、小中高校の対象別に、歩行者と自転車に分かれたコンテンツをオンラインで学習する仕組みです。講師が東京からリモートで授業を行う方式だけでなく、学校に出向く方式があり、出向いた場合も、生徒を体育館などに集める形態と、教室の自席から参加してもらう形態があります。
 授業は、交通法規や自転車用ヘルメットの重要性の説明などの座学と、グループディスカッションで構成しています。重視しているのは参加、体験、実践。「動画を見て話を聞いて終わり」の一方通行にならないよう、ワークシートへの記入やテスト、アンケート、掲示板などの機能を活用しながら、しっかり考えて発言してもらう対話型の学習を目指しました。

教室でオンライン授業を受ける生徒教室でオンライン授業を受ける生徒

成人・高齢者も対象の「講習」開設

 交通安全は、繰り返し継続して教育していくことが重要です。しかし、学校では十分な時間を確保することが難しく、年1回の指導や、対象は新入生限定という学校もあるようです。そこで、家に帰って復習や補習ができるよう、家庭からもコンテンツにアクセスできるようにしました。
 2024年度からは、対象を一般に広げた「交通安全オンライン講習」も展開しています。死亡事故を減少させるには、高齢者の事故を減らすことが欠かせないにもかかわらず、交通安全教育に接する機会が少ない高齢者が多いからです。また、最近は企業から「自転車について講習を実施してほしい」という要望が高まっています。2026年4月から自転車への交通反則通告制度(青切符)が導入され、通勤や業務で自転車を利用する社員一人一人が、ルールを正しく理解し、安全に利用することの重要性がこれまで以上に高まっているためです。時間や場所を問わず視聴でき、企業でも主流になっているeラーニング方式の学習も、プラットフォームに取り入れました。
 また、交通安全教育に当たる交通指導員の養成にも取り組んでいます。近年は人手不足の影響により指導員が減り、実践型の交通安全教室も全体的に減少傾向にあります。当協会が年1回実施する養成研修では、教育の機会を広げていくため、新たな手法としてオンラインによる交通安全教育を紹介しています。

交通安全オンライン教室のサイト画面交通安全オンライン教室のサイト画面

時代に合わせたコンテンツ

 「オンライン教室」開始当初は、学校のパソコンの基本ソフト(OS)の違いやセキュリティの関係でサイトに接続できなかったり、大人数が同時に参加するとサーバーが重くなったり、という難しさもありました。改修を重ね、2021年度からの3年間で、オンライン教育の枠組みができました。授業を受けた生徒のアンケートでは「交通安全意識が高まった」が86.4%に上りました。官公庁や地方自治体のウェブサイトのリンク集にも掲載されるようになり、手応えを感じています。
 一つ一つのコンテンツは見やすいようコンパクトな作りにしており、バージョンアップや追加を進めていく予定です。2025年には官民連携協議会により「自転車の交通安全教育ガイドライン」がまとめられ、未就学児から高齢者までライフステージごとに、教育の目標や内容、手法などが細かく挙げられました。こうした社会の新しい動きに対応した、実効性のあるサイトを目指しています。学校の先生が使いやすいよう、システムを簡略化することも課題です。
 オンライン化というと遠隔講習のイメージが強いかもしれませんが、リモートに限らずICTやデジタル技術を使ってできる教室・講習として進めた方が、さまざまなニーズに応えられ、交通安全教育の幅が広がっていくと考えています。

遠隔で授業を行う講師遠隔で授業を行う講師