特定非営利活動法人 安全と安心 心のまなびば・金光義弘理事長にインタビュー

2020年度 自賠責運用益拠出事業/地域密着型交通安全教育の方策開発と普及活動支援

アクセルとブレーキを踏み間違えるなど、高齢者の運転トラブルが近年クローズアップされています。日本損害保険協会ではこうした高齢者が原因となる事故の防止を目指し、ドライブレコーダーを使って自分の運転の長短所を自覚する研究を支援しています。
ドライブレコーダーのカメラは前方と後方用だけでなく、運転姿勢やペダル操作も録画するため計4つを設置。記録映像は「安全運転カフェ」と名付けた振り返りの場で本人が自己評価するほか、知人、家族らも視聴して互いに学び合います。
「教える」のではなく、本人の「気付き」に重点を置いた研究を進める「安全と安心 心のまなびば」の金光義弘理事長に伺いました。

無意識運転から意識運転へ

 カメラは約2週間設置し、その間に2回の「カフェ」を開催します。気付きのために行なう自己評価は、1.安全運転を意識、2.意識的な安全確認、3.安全確認のための視線移動の頻度、4.(ブレーキペダルに足を乗せる)危険回避準備行動の有無、5.ナビ画面を見る頻度、6.(ブレーキから足を離すと車が動く)クリープ現象の活用の様子等、計6項目。特に6は研究2年目の2020年度、急発進防止につながる要素として新たに加えました。短所を他人から指摘されても受け入れることは難しいですが、映像を見て自覚することによって無意識に行っていた危険な運転を意識的に改善するようになります。映像を見て気付いた癖も自ら書き出し、運転の特徴を理解することに役立てています。

若者への応用にも可能性

 1年目は6団体18人、2年目はコロナ禍の影響がありましたが8人が研究に協力してくれました。自己評価は「カフェ」以外にもドライブレコーダー設置時と、撤去した約1カ月後の計4回、5点満点で行います。いずれの項目も点数がアップしたうえ、自由記述では「走り始めてからシートベルトをしている」「スマホを見すぎかも」といった気付き、「一時停止を3秒とるようにした」といった改善が見られました。高齢者を対象として研究を始めましたが、協力者には20、30代も多く若者にも応用できると考えています。事故防止に有効なエビデンス(証拠)を積み重ね、自分の運転の問題点が明らかになる手法の一つとして提供していきたいと思っています。

「安全運転寿命の延伸」を目指す

 研究では「映像を撮られる」「他の人に見られる」ことへの抵抗感が強いことが判明。普及法として仕事の一環となる社内研修、家族内での活用から検討したいと思っています。さらに私たちは、高齢者の交通事故は認知機能の低下だけでなく、手足の筋肉量が減少し、身体機能が低下する「サルコペニア」も原因と考え、予防体操を紹介する動画も製作中です。動画を見ながら取り組める内容で、ホームページでの公開を予定しています。(2021年現在)
 いずれも目的は「安全運転寿命の延伸」。地方では車は生活に欠かせません。少しでも長く運転できるために、また安全運転できなくなった場合は運転免許証の返納に納得できるような仕組みを構築したいと思っています。