認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク・篠田伸夫理事長にインタビュー

2019年度 自賠責運用益拠出事業/ヘリコプターを活用した救急医療システム構築のための事業補助

交通事故や災害の現場に医療チームを乗せて駆けつけるドクターヘリは、日本では1999年に試験運航を開始しました。20年が経過した現在、43道府県に53機が配備され、多くの命を救っています。
ドクターヘリの普及を目指し99年12月に発足し、調査研究や情報発信などに当たっている救急ヘリ病院ネットワークを支援しています。同NPOの篠田伸夫理事長に、現状や課題についてお話を伺いました。

大震災きっかけに

 ドクターヘリは、基地病院の救命救急センターに医療機器や医薬品を装備・搭載して待機し、要請が来ると医療チームを乗せて現場に出動するヘリコプターです。導入のきっかけは95年の阪神・淡路大震災でした。道路が寸断されて救急車は動けず、救えたかもしれない500人の命が失われました。
 当時、「救急」と言えば、患者を救急車で病院に搬送することでした。海外の先進事例を踏まえ、発想を180度転換し、医師を患者のもとに運びいち早く治療を開始する救急ヘリを求める声が高まりました。99年に神奈川、岡山両県で試験運航が始まり、2001年に本格事業としてスタートしました。

救命率39%向上

 18年度に全国で2万9,000件余り出動し、このうち交通事故は約4,500件でした。出血多量の患者は、救命措置をしなければ30分後には半数が亡くなる、とされています。本NPOの研究によると、救急車搬送に比べドクターヘリ搬送の方が、救命率は推計で39.0%向上し、退院までの日数は実績で16.7日減少と、大きな効果が見られました。
 新しい試みとして、交通事故車が衝突方向や衝撃の大きさ等を基に推定した死亡重症度を、消防や基地病院に自動通報する「D-Call Net(ディーコールネット)」を、18年度から本格運用しています。事故発生から治療開始までの時間が17分短縮され、全国の交通事故死者数を年間282人減らす効果があると推定されています。装置は約80万台(19年2月末現在)に搭載され、19年度末で約700件の事故でヘリが5回出動しました。

 

夜間飛行の研究開始

 ドクターヘリ配備で最後まで残っていた東京都が導入の検討を19年末に表明し、量的な拡大はほぼ達成したと考えています。これからは質的な向上が目標ですが、課題はいくつかあります。
 一つは経費。ドクターヘリは航空会社に委託する形を取っており、1機当たり年間2億5,000万円かかります。救急車と同じで患者は料金を支払う必要がありません。国と導入道府県が負担していますが、航空会社の持ち出し部分があるのが現状です。
 24時間対応も重要です。ヘリは操縦士の目視に頼る有視界飛行をしなければなりません。飛行の安全を考えると夜間飛行は問題があるのですが、急病人は夜間でも発生します。2020年度から関連学会などとともに研究を始めることになりました。