一般社団法人全日本指定自動車教習所協会連合会・内山直人事務局長にインタビュー

2019年度 自賠責運用益拠出事業/高齢運転者の運転時認知障害の早期発見事業を支援

高齢の運転者による悲惨な交通事故や高速道路の逆走などのニュースを、新聞やテレビで見かけます。これらの事故等の要因の一つに認知機能の低下が考えられます。
現在、70歳以上の人は免許証を更新する際に高齢者講習を受講することとなっていますが、75歳以上の人は認知機能検査も併せて受けることが、道路交通法で定められています。
当協会では、全国約1,260の指定教習所でつくる全日本指定自動車教習所協会連合会が行っている、高齢運転者の認知障害を早期に発見する事業(「もの忘れ相談プログラム」)を支援しています。同連合会の内山直人事務局長に、事業の内容についてお話を伺いました。

もの忘れ相談プログラム

 私たちが行っているのは、75歳以上の人が免許更新時に受ける認知機能検査ではなく、75歳以上という年齢にかかわらず、若年性認知症や軽度認知障害の疑いのある人を早期に発見し、安全な交通社会の実現に寄与するための事業で、そのために活用しているのが自分で認知機能をチェックするプログラムです。これは、浦上克哉鳥取大教授が考案したプログラムをタブレットに搭載し自動化したもので、この装置を2018年度と19年度に計40都道府県協会に1台ずつ配備し、教習所等で活用しています。20年度は残る7県の協会と高齢者講習の実績の多い府県等も含め20台を配備する計画です。
 画面の表示に従い、言葉を思い出す、立体を違う角度から見た図形を選ぶなど、5項目に答えます。自分一人でできて5分程度で済み、信頼性が高いことなどが特長です。15点満点で12点以下だと「もの忘れが始まっている可能性が疑われる」となります。

 

納得し免許返納

 高齢者講習で教習所に来た人にやってもらったり、交通安全イベントの会場に設置したりして、19年度上半期までに約5,200人が受けました。そのうち30人の人に警察の運転免許センターなどにある相談窓口に行くようアドバイスしました。
 「大丈夫だったので安心した」「毎年やりたい」という声が多い一方で「悪い結果が出ると心配だから」と言って試さない人もいました。実際にやってみると、結果に応じて納得してもらえるのですが。
 こんな男性がいました。病院で医師から認知機能低下の診断結果を受け、認知機能検査の結果も悪かったのですが、家族が言っても免許証を返納しようとしない。本人の強い希望でさらにもの忘れプログラムを実施し、結果を教習所の指導員が丁寧に説明したところ、納得して「返納します」と言っていただきました。

 

血圧計のように

 プログラムの狙いは、免許証を返納させることではありません。ご自身の認知機能を自覚し、安心してもらう、あるいは不安を覚えた人に「どうしようか」と考えてもらう一歩になることです。理想は病院にある血圧計のように、どこの教習所にも置いてあって気軽に受けられることだと考えています。高価なため、まだ各都道府県に1台あるかないかで、あまり知られておらず、触る機会が少ないのが課題です
 運転免許を持っている8,200万人超の人のうち、70歳以上は14%以上を占めます。これから高齢運転者は右肩上がりで増えてきます。地方では車がないと生活に困ります。安全に長い間運転してもらうためにも、このプログラムはいいツールだと思います。