北京パラリンピック金メダリスト・石井雅史さんにインタビュー

2010年度 自賠責運用益拠出事業/高次脳機能障がい者への支援

高次脳機能障害の当事者およびその家族の社会復帰を目的に、(NPO法人)日本脳外傷後遺症リハビリテーション支援ユニオン(JUTRA)が実施している「集団治療プログラム(通称:オレンジクラブ)」を支援しています。

「オレンジクラブ」の目的や意義について、オレンジクラブ卒業生で北京パラリンピック金メダリストの石井雅史さんにお話を伺いました。

人生の転機

 私は、競輪選手として活躍していましたが、2001年夏の交通事故で脳を損傷したことがきっかけで、記憶力の低下や疲れやすいなどの症状が出る「高次脳機能障害」を負いました。退院後すぐにでも競輪に復帰する意気込みでしたが、練習する日々の中で、バランス感覚が悪くなったり、以前のような自転車のスピードを出せないなどの障害を認識するようになり、引退を決意しました。
 目標を失った私は、次第にふさぎこむ事が多くなり、失敗や他人とのトラブルも絶えず、家に閉じこもりがちの生活を過ごしていました。

目標を持つことの大切さ

 そんな時に出会ったのがオレンジクラブです。
 オレンジクラブは、病院で行われる個人のリハビリとは違い、当事者や家族、医療スタッフなど、10人程度で行われる集団治療プログラムです。
 そこで行われるリハビリのうち、特に印象に残っているものは、当事者の1人が日頃困っていることを打ち明け、参加者全員で真剣に考え、解決策を話し合い、毎日できることを目標として宣言し、実行するというものです。
私は、このプログラムをきっかけに、また、大好きだった自転車に乗ることになりました。いざ乗ってみると、体が覚えていたのか競輪選手時代の気持ちに戻り、次第にタイムを縮めたいという気持ちを強く持つようになりました。そして、北京パラリンピックで金メダルを取るに至ったのです。

お世話になった監督(写真左)と

好きなことや、心がワクワクすることを探そう!

 私も明確な目標を持って前向きな生活を過ごせていなければ、今でも家に閉じこもりの生活を送っていたかもしれません。高次脳機能障害は、目に見えない障害と呼ばれ、他人から理解されず、失敗やトラブルが絶えない毎日で心が沈んでいる人も多いと思います。しかし、過去の自分に固執せずに、常に目標を持って前向きに生きていれば、きっと今よりも良くなるはずです。
 私は、常に目標を持ち続け、12月に中国の広州で開かれるアジア大会でもメダルを獲得することを目標にし、厳しい練習に耐えてがんばっています。

石井雅史さん

NPO法人 日本脳外傷友の会・東川悦子 理事長にインタビュー

2011年度 自賠責運用益拠出事業/リハビリテーション講習会の開催支援

脳外傷(※)による後遺障害を負った患者さんやそのご家族など、多くの関係者が参加するリハビリテーション講習会の開催を支援しています。
国内の各地にできつつある脳外傷による後遺障害を負った患者さんと家族の会が実施する活動などを支援し、リハビリテーション講習会についても後方支援いただいている、日本脳外傷友の会・東川悦子理事長に、リハビリテーション講習会の目的や課題について伺いました。
※脳外傷とは、交通事故などで頭を打つことによって脳挫傷などの傷害を負ってしまうことで、 正しくは外傷性脳損傷のことをいいます。

リハビリテーション講習会の意義

 この講習会を開催してもらったおかげで、それまで低かった「高次脳機能障害(※)」の認知度が飛躍的に高くなりました。講習会を通じて、被害者ご自身やそのご家族の方々のコミュニケーションも図られるようになり、また、医師・看護師やヘルパーさんなどの医療関係者の皆さんにも参加いただくことで、双方の理解を深め、互いに連携することにも繋がっており、大変意義深いことだと感じています。

※高次脳機能障害とは、交通事故や脳卒中などが原因で脳が損傷され、思考力・記憶力・注意力・学習能力・言語・行為などに機能障害が起きた状態です。

波及効果

 講習会は、各地の家族会が主体的に運営に関わっていますが、当初、講習会を立ち上げた頃は、何をやったらよいのか戸惑う家族会などもありました。しかし、講習会の開催を始めて9年目の今では、安定的に運営しており、家族会の日常の活動を行っていくうえでも、実行力を培うよい機会になったと実感しています。
 併せて、運営に携わる行政や拠点病院などの意識も徐々に変わりつつあると感じています。

今後の課題など

 リハビリテーション講習会の成果は上がっていると感じていますが、細かく見ると、まだまだ地域間の格差(理解や実行力など)があることも否めません。
 これまで開催してきた経験を踏まえ、より効果的な運営を心掛けていくことはもちろんですが、今後は、特にグループセッション等も取りいれて「職場や日常生活の改善に役立つ内容」や「高次脳機能障害に関わる様々な分野の専門家の育成」という具体的な研修内容の充実を図るよう各地の実行委員会に助言していきたいと思います。