日本医科大学付属病院高度救命救急センター・渡邊 顕弘先生にインタビュー

2010年度 自賠責運用益拠出事業/救急医への外傷診断研修

一人でも多くの交通事故被害者の命を救い、その後の後遺症を軽減させるために、日本外傷診療研究機構が実施している救急医療に携わる医師向けの研修(JATEC)を支援しています。

JATECの目的や意義について、実際に受講された日本医科大学付属病院高度救命救急センター・渡邊 顕弘先生にお話しを伺いました。

素早い診療判断が命を救う

 高度救命救急センターは、交通事故で大ケガをした重症症例が搬送されてくるので、非常に緊迫した場所です。救急医療の診療は、患者さんから症状を聞いて検査をするといった通常の診療方法とは異なり、来院時から意識が無いことや、全身に損傷を受けていることが珍しくありません。その場その場で、たくさんある重症部位を、どこから診療するのか迷うのではなく、preventable trauma death(PTD:防ぎえた外傷死※)に至らない為に、蘇生が必要な緊急性の高い生理学的徴候を系統的に漏れなく見つけ出す事が大切です。

※適切な診療を受けられていれば助かったであろう外傷死

自信を持って診療判断ができる

 JATECでは標準的な外傷診療の習得を目的として、救急現場から搬送される様々な患者さんの状態を想定したシナリオをもとに、本物の医療器具や人体模型を用いて、患者の受入れから診療の一連の流れを再現した実技演習が行われています。
 これにより、どんなに危機的な状況下でも救命医が何をすべきか混乱せずに冷静に自信を持って判断ができ、重大な損傷を見落とすことを防ぐことができます。

JATEC受講風景

ドクターカーで急行した現場で

 ドクターカーで急行した交通事故現場でJATECでの経験が役立ちました。一見したところ重症でない様子でしたが、学んだ手順通りに蘇生の必要性を判断する観察を進めていたところ、呼吸に異常があることが分かり、実は緊急性の高い緊張性気胸になりかけていたことが分かりました。
 冷静に対応した事で致死的な状況を回避できたと思います。

渡邊 顕弘先生