NPO法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)の今成知美代表にインタビュー

2020年度 自賠責運用益拠出事業/飲酒運転防止のための啓発事業支援

国内で患者が100万人以上、予備軍も含めると約300万人と推定されるアルコール依存症は、健康を害するだけでなく、飲酒運転による事故や職場、家庭でのトラブルの原因となります。ASK(アスク)はアルコールによって起きるさまざまな問題の予防と解決を目指し1983年に発足。依存症関連問題の「発生」「進行」「再発」の三つを予防する運動を続け、2013年のアルコール健康障害対策基本法成立にも重要な役割を果たしました。当協会では飲酒運転防止のための啓発事業を支援しています。薬物乱用やネット・ゲーム依存にも活動領域を広げているASKの今成知美代表にお話を伺いました。

飲酒習慣改善と依存症の予防

 飲酒運転による死亡事故は厳罰化によって減りましたが、根絶はできていません。午前中の飲酒運転は前夜の飲み過ぎが多く、午後の飲酒運転は依存症の可能性が高い傾向があります。これらを防ぐには、アルコールが分解されるのにかかる時間などの基礎知識や、飲酒習慣を改善する具体的な方法についての啓発が必要です。私たちは2008年から、職場や地域で教育に当たる人材の養成に取り組み、認定したインストラクターは約4,500人に達しました。損保協会からは 1.地域啓発活動 2.一般向け無料体験講座「公開スクーリング」 3.インストラクターのアップデート研修の3つの事業に助成をいただいています。

コロナで増加の「宅飲み」注意

 地域啓発活動では、毎年11月のアルコール関連問題啓発週間に、各地で開かれるイベントにブースを置いています。2020年は新型コロナウイルスの流行拡大でイベントが軒並み中止となったため、テレワークの推進で増えた「宅飲み(家飲み)」の落とし穴をまとめた啓発動画を作成し、YouTubeにアップしました(新型コロナ ステイホームと飲酒運転)。宅飲みだと、終電を気にしなくても良いから終わりがない、飲み過ぎて日中まで酒が残っている、となりがちです。運輸関係の企業からは「社員全員に視聴させたい」と要望があり、データを提供しました。公開スクーリングはオンラインに切り替え、インストラクターのアップデート研修はDVDを活用しつつ密を避けた集合研修を実施しています。

オンライン活用

 飲酒がダメというのではありません。アルコールへの正しい知識を生活習慣に結びつけることが大事です。特に免許を取得する時期と飲酒を始める時期が一致する若者の飲酒運転防止が大きな課題になっており、自動車教習所での教育が重要になっています。オンラインでの公開スクーリングやアップデート研修は、幅広く情報が届けられ、会場までの時間や交通費が節約でき参加しやすいと好評でした。一方で手厚い指導がどこまでできるか課題は残っています。少人数での研修を残しつつ、オンラインの利点を生かした活動を進めたいと考えています。